あとがき~ヘルメスは私にだけ見える

 猫宮書店の人生初脚本が、このギリシャ神話シリーズです。一番最初に取り掛かったのがヘルメスは私にだけ見えるだったので、「本当に書けるのか?」「これでいいのか?」って思いながら書いてました。

 具体的なテーマとか考えるべきなんだろうけど、そんな余裕なく、とりま不器用な主人公が一歩前に進もうとする話が書きたかったので、こんな感じになりました。

 初めてだったので苦労しました。だってギリシャ神話なんて全然知らなかったもん。

 図書館で、たまたまギリシャ神話の面白そうな本を見つけてしまって、思いつきで始めただけだったもんで・・・でもいい経験になりました。

 キャラクター達について

●ヘルメス編

 何の説明もなく、いきなり本棚の裏から登場する少年、ヘルメス。

 ヘルメスっていうのはギリシャ神話の神様です。彼の有名なエピソードは、生後まもなく太陽神アポロンの牛50頭を盗み、アポロンに牛の返却を求められると、自分が作った堅琴と交換する事で決着させた。なんてのがありますね。

 なぜ、彼は蕗子の元に現れ、そして去っていったのか。

 実は、ヘルメスは蕗子のイマジナリーフレンドだった訳で。友人のいない蕗子は空想上でヘルメスという友人を作り、部屋でお喋りをしていた。という設定でした。なので彼は実在しません。

 何でヘルメスをイマジナリーフレンドにしたのか? 

 神話でヘルメスは主役級の逸話は少ないが、誰かを助けたり、交渉役をこなしたり、サポート的な役割の多い彼。

 ex)メデゥーサ退治に行くペルセウスに空の飛べる靴を貸してあげた、とか。

 人間関係が不自由な蕗子は、そんな彼に憧れと、救いのようなものを求めていたのかもしれません。

 でもヘルメスは、蕗子に新しい人間関係ができると自分から去っていってしまいます。

 彼の最後の「さよなら」のセリフを書いた時は、ちょっと切なくなりました。

●蕗子編

 学芸員になる夢はあって、努力をしているものの、まともな友人はいない。そんな彼女は小学校まで順風満帆だったが、中学の人間関係でコケてしまい、そこから後ろ向きになっていった・・・

 そこで、イマジナリーフレンドのヘルメスに話し相手になってもらい、なんとかやっていけたものの、次第に「これでいいのか?」と葛藤が生じていたと。(大学生にもなって、イマジナリーフレンドと仲良くしていていいのか?と思うんですね。)

 そんなハイパー内向的人間、蕗子。

 思い返せば中学時代って、大して理由もないのに嫌ったり、陰口たたくヤツっているんですよ。だから蕗子もそれほど悪い事していないっていう。

 高校時代も、クラスに馴染んでない蕗子に近づいてきて、話のネタにするために、情報収集されたエピソードが出てきますが、これ、実話を元にしています。私の高校時代にもそういう事やってるやついましたもん。それも男子が。

 いじめとまでいかなくても、悪趣味な行動をとるやつはいるもんです。でも、くだらないヤツのくだらない事でいつまでもうじうじする必要はないんです。

 なので、色々がんばれ、蕗子。

●奏芽編

  ボッチの姉とは対照的に友人は多く、ちゃんとオシャレもする弟。そんな奏芽。

 冒頭で小生意気な口ぶりでしたが、蕗子をちゃんと心配しているのです。

 あの後、服を買おうとする蕗子にアドバイスして、学祭までにこじゃれた女子大生に改造してくれるんじゃないかと、勝手に想像して楽しんでました。

 出番は少ないけど気に入ってるキャラでした。

以上、あとがきです。最後まで読んでくれてありがとうございました。

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