アポロンはやさしく歌う
★ギリシャ神話シリーズ 第2弾
★2人
★20分くらい
★あらすじ:演劇サークルの部長、川瀬。好きな子がいるが、相手にされない日々を送る。そんな中、サークルOGの原と台本読みをする。
【登場人物】
川瀬・・・演劇サークルの部長
原 ・・・図書司書、演劇サークルの元部員
本編スタート
時間は17時過ぎ、演劇サークルの部室にてスマホをいじっている川瀬。
高校の時のクラスTシャツを着ている。
川瀬 :メール確認中・・・サーバ同期中・・・メッセージ確認中・・・新着メールは、ありませ~~ん。
スマホを机に置き、深くため息をつく川瀬、
カバンからipodを取り出し、音楽を聴きながら、ぼそぼそ歌う。
だんだん声が大きくなる。
やがて、自分を慰めるように、やけっぱちで歌う。
原、登場。気づかず歌いつづける川瀬
川瀬 :(気づく)・・・!!やぁ・・・。
原 :何してんの?
川瀬 :いや、別に・・・。
原 :廊下中に響いてたよ。
川瀬 :恥ずっ
川瀬の向かいにある椅子に座る原。
原 :はーっ疲れた。
川瀬 :仕事帰り?
原 :うん、今日定時であがれたから、サークルに顔出そうと思って。
川瀬 :卒業したのによく来るな。
原 :だって、気になるじゃん。学祭の公演が一番気合い入るでしょ?
川瀬 :まぁな
原 :本番まで1週間ぐらいでしょ?
川瀬 :そうだけど、わりぃ、今日練習休みなんだ。
原 :ええ!
川瀬 :なんか集まり悪くてさー、休みにしたんだ、ごめん。
原 :なんだー・・・でも川瀬はなんでいんの?
川瀬 :あ、俺は予定ないし、何となくいるだけ。
原 :何だそれ(笑)まーでも、ここ居心地いいから、来たくなるのも分かるな。
川瀬 :まぁな
原 :でも残念、皆の稽古観て、癒されようと思ってたのに。
川瀬 :・・・何かあったのか?
原 :んー、職場の先輩に注意されちゃって。
川瀬 :何て?
原 :あ~・・・何か、人を頼る前に自分の頭で考えるもの大事だよって。私、まだ仕事自信なくて、すぐ先輩に質問しちゃうからさ。
川瀬 : あっちゃ~
原 :もう今日は散々、クレーム対応もしたし・・・あーもう辞めたい。
川瀬 :原ー、せっかく図書司書になれたのに、もう辞めんのかよ。
原 :うん・・・。
川瀬 :そんな落ち込むなって、そのうちできるようになるから
原 :そうかなぁ?
川瀬 :原はできる子だから、大丈夫!
原 :はは・・・ありがと。
川瀬 :自分はできる、大丈夫!って思い込ませる事さ。俺はこうやって、辛い浪人時代を乗り越えてきたから・・・。
原 :あーそうか、うちら学年違うけど、歳は同じだもんね。
川瀬 :ね~
川瀬、パソコンに向かい、タイピングする。
原 :何してんの?
川瀬 :あ、これ?脚本書いているだけ。
原 :なに?次回公演の脚本?
川瀬 :いや、ただの気分転換、公演用じゃないよ。
原 :何?どんなの?
川瀬 :ギリシャ神話をモチーフにした話。
原 :えー何で、ギリシャ神話?
川瀬 :え・・・知り合いが、ギリシャ神話好きだから、その影響
原 :ふ~ん、面白い?ギリシャ神話。
川瀬 :ああ、原も読んでみろよ。
原 :ん~、神話かぁ・・・。
川瀬 :何?興味なし?
原 :うん
川瀬 :ばっか、面白いんだぞ、ギリシャ神話ってのはな、紀元前何千年も前からある話なんだ。
原 :へーそんな昔
川瀬 :そう、まだ文字もない時代から、古代ギリシャ人が語り伝えてきたものがギリシャ神話なんだ。それが現代の、遠く離れた日本にも伝わっているんだよ。
原 :へー
川瀬 :すごいだろ、ちょっと興味わいたか?
原 :うん
川瀬 :じゃあさ、この本読んでみろよ。
原 :何?
川瀬、カバンから本を取り出す
川瀬 :神々の恋人~神話の中のロマンス~(※実際にある本です)
原 :ええ~
川瀬 :これは、神話の恋愛モノをより抜いた本なんだ
原 :いや、恋愛って、益々らしくないじゃん
川瀬 :えっ・・・そう?
原 :何かあったの?
川瀬 :いやっ何も・・・悪いかよ、こーゆー本読んだら
原 :いいけどさ
川瀬 :面白しれぇぞ、今書いてるのだって、この本を元にしてるんだぜ
原 :へーどんなの?
川瀬 :太陽神アポロンってのがいるんだけど、そいつの初恋の話
原 :読みたーい
川瀬 :まだ出来てねぇよ
原 :てゆーか台本読みしたい。
川瀬 :ええ~これで?
原 :いーじゃん、久々にやりたいの
川瀬 :しゃーないな、印刷するから、待ってて。
川瀬、部室を出る。原、さっきの本を手にとる。
原 :・・・恋愛、か・・・。
川瀬、戻ってくる。
川瀬 :おまたせ。じゃ、読んでみっか。
原 :うん!
川瀬 :じゃ、俺がアポロン読むから、原は、語りとダフネーとエロスとペーネイオース読んで
原 :そんなに!?
川瀬 :じゃ、スタート!!
【アポロンの初恋~川瀬アレンジver】
アポロン 川瀬
ダフネー 原
エロス 原
河の神ペーネイオース(以下河の神) 原
語り 原
語り :時は紀元前、古代ギリシャには多くの神様がいました。彼らは人間のように恋をする事もあり、そして恋に悲しむ事もありました。ギリシャ神話一の美男子であるアポロンも例外ではありません。彼の初めての恋は、それはそれは波乱に富むものだったのです。
アポロン :俺はアポロン、太陽神。弓矢の達人で、さっきも巨大竜ピュトンをやっつけてやった。見てのとおり俺ってイケメンだし、存在自体が神だよね?まぁ神なんだけど。
語り :アポロンは美しい容姿をしており、ちやほやされる事も多かったので、思いあがったところがありました。そして、恋の神エロスにこんな事を言ったのです。
アポロン :ようエロス
エロス :何だい、アポロン君
アポロン :俺さっき、巨大竜ピュトンを弓でやっつけてやったぜ。
エロス :へーすごいな、さすがアポロン君だね。
アポロン :エロスって、今まで怪物とか倒した事ある?
エロス :ぼ、ぼくの弓は恋の矢だから、怪物をやっつける事はできないのさ。
アポロン :あ、ごっめ~ん、そうだったね~。
エロス :そ、そうなんだよ、へへへ~・・・。
アポロン :僕の矢は大きいから持ち運びが大変でさ、でも君の矢は小さくていいな、まるでおもちゃみたい(笑)
エロス :よく言われるよ、ははは~・・・。
アポロン :まぁ、せいぜい頑張れよ、恋の縁を結ぶだけなんて地味な役割だけど、君にはよく似合ってるよ。それじゃー。
エロス :・・・ア~ポ~ロ~ン~!!!調子こきやがって~~~!!恋の縁を結ぶだけだぁ?何も知らないくせに偉そうにするんじゃねぇ~~!
語り :怒りまくるエロスでしたが、そこに一人の妖精が通りかかりました。ダフネーです。ダフネーは河の神ペーネイオースの娘で、美しい容姿をしていました。
エロス :ククク・・・いー事思いついた。アポロンよ、エロスの矢の恐ろしさを、思い知るがいい・・・!
語り :ある日エロスは、アポロンとダフネーが鉢会うのを狙って、パルナッソス山の頂にいました。そして二人が出会った瞬間、2本の矢を放ったのです。
エロス :パシュッ、パシュッ(矢を放つジェスチャー)
アポロン :グサッ(刺されるジェスチャー)
ダフネー :グサッ(刺されるジェスチャー)
倒れるアポロン、ダフネー
語り :アポロンには恋を燃やす金の矢を、ダフネーには恋を冷ます鉛の矢を、それぞれ打ち込みました。そして、この時から、アポロンの猛烈な恋が始まったのです。
アポロン :(起きて)はっ、なんと美しい!
ダフネー :(起きて)・・・ん?太陽神アポロン・・・?
アポロン :(ダフネーの手を取り)ねぇ、僕と付き合わない?
ダフネー :は?(手を振りほどく)冗談はよして。
語り :鉛の矢を打たれたダフネーは恋を忌み嫌うようになり、自分に言い寄ってきたアポロンなど、ケダモノのようにしか見えなくなっていたのです。
ダフネー :何よ、急に人の手ひっつかんで、調子に乗らないで
アポロン :もう、そんな事言わないでくれよ
アポロン、ダフネーに近寄る
ダフネー :寄らないで!・・・大体あんた噂によると、デルポイの神託所で、人間たちにいい加減な神託をしているそうじゃない、どうしてそんな意地悪するのよ。
語り :神託所とは今でいう占いの館のようなものです。
アポロン :フッ・・・人間なんかに未来は教えてやらないさ、でも君は特別、ダフネー、僕たち二人の恋の行方、占ってみたくない?
ダフネー :はぁ?!私、恋とか愛とか大嫌い!どうせ他所でもいろんな女、口説いてるんでしょ?忌々しいったらありゃしない!
アポロン :・・・お
ダフネー :・・・?
アポロン :怒った顔も、かわい~~
ダフネー :バカなの!?
アポロン :もう我慢できない!ダフネー、好きだーーー!!
ダフネー :ぎゃーーーーー!!!!
ダフネー、アポロンをよける
アポロン :あれ、いなくなった?おーいどこ行ったんだー?
語り :追い詰められたダフネーは父であるペーネイオースに祈りました。
ダフネー :お父様、こんな男に捕まるくらいなら、私の姿を別の姿に変えてください
語り :そして、ダフネーの必死の祈りは、ペーネイオースに届けられたのです。
アポロン :あっいたー、つーかまーえた💛
ダフネー :(アポロンの腕を振り払い)パシッ、シャララーン、カッキーン
ダフネー月桂樹に変わる舞を踊る、木のポーズで静止。
語り :ダフネーの姿は、1本の月桂樹に変えられてしまいました。
アポロン :・・・何だよ今の、ダフネーの体が、葉っぱや木の皮で覆いつくされて・・・え?嘘だろ?隠れているだけだよな、おいっダフネー!返事してくれ!
原 :ちょ、ちょっと川瀬・・・
川瀬 :何?
原 :この態勢、辛い・・・
川瀬 :あぁ、どうぞ
原、木のポーズをやめる
アポロン :・・・そんな、何が起こったんだ。
河の神:アポロン
アポロン :誰?(河の神の声だけ聞こえてる)
河の神:私は河の神ペーネイオース、ダフネーの父だ。私がダフネーを月桂樹に変えたのだ
アポロン :何でそんな事を!
河の神:仕方ないのだ。娘が心から望んだ事だ。そして、私の願いでもある。
アポロン :どうして・・・!
河の神:アポロン、お前は己の欲のままダフネーを追いかけまわした。彼女はさぞ恐ろしい思いをしただろう。
アポロン :僕はそんなつもりじゃ・・・
河の神:嘘をつくな!お前はダフネーを捕らえて、思い通りにしようとしたのだ!・・・だが、お前だけが悪い訳ではない。ダフネーの美しさが、この悲劇を生んだのだ。きっと、この先もお前のような者が現れるだろう、ならばいっそ、月桂樹になってくれた方がいい、その方がずっといい・・・!
アポロン :もう追いかけない!恐い思いもさせない!僕がダフネーを守るから!元に戻してくれ!お願いだ・・・お願いだから・・・。
河の神:悲しいか?アポロン。ならばその葉を切り、冠をこさえるのだ。その冠こそ、ダフネーへの、贖罪のシンボルとなるだろう。
アポロン :・・・できない。
語り :アポロンは、冠を作りませんでした。木になったとはいえ、愛する人を
切る事は出来なかったのです。
アポロン :ダフネー、ごめん・・・。
語り :深い悲しみの中、アポロンはダフネーから動けなくなり、そしてそのまま、眠りについたのです。アポロンが目を覚ましたのは朝、ひばりが鳴く頃でした。この日は晴れていて、ダフネーの木の葉ごしに見る空は、とても美しいものでした。
アポロン :こんな時でも、空を美しいと思えるのだな。
語り :その時、風が吹いて、ダフネーの葉を揺らしました。その葉の揺らぎは、まるで相槌をうつようでした。
アポロン :・・・聞こえているのか?
語り :ダフネーは何も言いません。でもこの時アポロンは決心をしました。月桂樹でも、ダフネーと共に生きていこうと。それから、アポロンはダフネーの為に生きていきました
語り :ダフネーが枯れないように雨を降らせたり。害虫がいればはらってあげたり、かいがいしく世話をしたのです。
ダフネー :どうして・・・?私はただの月桂樹なのに、どうして傍にいてくれるの?
アポロン :ダフネー、風に揺れる君を見ているだけで、この世界が愛おしく思える。君と出会えて、本当の幸福を知った気がするよ。
語り :アポロンは、そんな日々を、ずっと過ごしてきました。人の一生分くらいの、長い年月でした。
アポロン、月桂樹のダフネーにもたれるように座り、幸せそうに歌を口ずさむ。歌は、川瀬が冒頭で歌った歌。
アポロンの優しい歌が、ダフネーの胸に響く
ダフネー :きれいな歌・・・私も歌いたい。あの頃みたいに、歌いたい。
歌うアポロンを背後から見つめるダフネー。
その視線はやがて原自身のものになっていく
歌の最後の一小節分、二人は一緒に歌う。歌声でアポロンが振り返ると、
妖精に戻ったダフネーがいる。
アポロン :ダフネー?・・・元に戻ったのか・・・?
元に戻った事に気づくダフネ―
アポロン :ダフネー!ダフネー!あぁ、よかった、本当に良かった!!あのね、僕は君に・・・
ダフネー :言わないで・・・!アポロン・・・私・・・。
沈黙する二人
川瀬 :・・・ごめん、ここまでしか出来てない。
原 :あーーーーーー!!いいとこだったのに!
川瀬 :こっから先が難航してるんだよなー。
原 :でも、この後二人は結ばれるんでしょ?
川瀬 :いや、どうかな
原 :え、違うの?
川瀬 :それでもいいんだけどさ・・・。
原 :ハッピーエンドでいいじゃん、アポロン頑張ったんだから。
川瀬 :頑張っても、好きになってくれるかは、また別の話じゃん。
原 :・・・そうかな~?
川瀬 :ま、今の俺には書けそうもないな。
原 :てゆーか、元になっているギリシャ神話があるじゃん?その通りに書けばいいんじゃないの?
川瀬 :いや、ギリシャ神話の方は、ダフネーが月桂樹になって終わりなんだ。元に戻らないんだよ。
原 :え!
川瀬 :アポロンが悲しんで、終わり。
原 :えー、やだー
川瀬 :なー、だから俺も、こういうオチだったらいいのに、と思って書いてみたんだ。
原 :うん、川瀬versionの方がいい。
川瀬 :だろ?このままだとあまりにもアポロンが可哀想だからさ
原 :アポロン・・・よりダフネーが可哀想じゃない?そもそも原因作ったのはアポロンだし?
川瀬 :そうだけど、それはダフネーの事、本気で好きだったから、つい追いかけてしまったんだよ、
原 :いや、それを許すのも・・・
川瀬 :でもさ、誰かを好きになったら、自分をコントロールできなくなる事もあるだろ?
原 :う~ん・・・。
川瀬 :ダメなのは分かってるけど・・・俺さ、アポロンが他人事に思えないんだ。
原 :川瀬?
川瀬 :(溜息)
原 :何よ、恋でもしてるの?
川瀬 :・・・・・・・・・・・うん。
原 :え?
川瀬 :(言ったそばから後悔)あー、そろそろ帰ろっかな~~。
原 :ちょちょちょっ・・・待って!(引き戻し椅子に座らせる)マジで!
川瀬 :(頷く)
原 :・・・大学の子?
川瀬 :(頷く)
原 :誰?
川瀬 :言わなきゃだめ?
原 :言えよ
川瀬 :・・・文学部の1年の、イナダフキコって子。
原 :まじか・・・。
川瀬 :おおお前絶対言うなよ。
原 :言わないから、で、片思い中なんだ。
川瀬 :(頷く)
原 :・・・ウケる(笑)
川瀬 :ウケねーよ!
原 :いやウケるわ、だってこの台本からしておかしいと思ってたもん。川瀬がこんなの書くなんて、何かあるなーって。
川瀬 :よ、よく分かったな。
原 :分かるよー、だって今までこんなセリフ書いた事あった?“ダフネー、風に揺れる君を見ているだけで、この世界が愛おしく見える、君と出会えて・・・”
川瀬 :ああーーーーーー!!恥ずかしい!!!!
原 :照れるなよ・・・恋してんじゃん☆
川瀬 :(恥ずかしさで悶える)
原 :いつから?
川瀬 :分かんない・・・図書室で初めて見た時から気になっていたけど。
原 :ギリシャ神話が好きになったのも、その子の影響?
川瀬 :・・・当たり。
原 :で、どうすんの?告るの?
川瀬 :いや・・・無理だよ。俺、彼女に好かれてないっぽい。話しかけてもテンション低いし、メールしても素っ気なくてさ。
原 :メール?ラインじゃなくて?
川瀬 :彼女、ガラケーだからラインやってない。ケータイの番号聞いて、ショートメールしている。
原 :・・・何か、手強そうな子だね。
川瀬 :俺、昔から古風な子がタイプでさ、教室の片隅で文庫本読んでるような、おとなしい子ばっか好きになるのよ。けど、そういう女子は、絶対俺の事好きにならないんだよな~。
原 :でも、今回もそうとは限らないでしょ。
川瀬 :いや、もう潮時かな。昨日メール送ったけど、まだ返事来ないし。
原 :何て送ったの?
川瀬 :学祭、一緒に回る人、いますか?って。いなかったら、俺と一緒に回ってくれねぇかな、って期待して送ったけど、返事来ないし、もうだめだ。
原 :気長に待ちなさいよ。
川瀬 :さっき、3回目のセンター問い合わせをしてしまったよ・・・。
原 :・・・(マジか)
川瀬 :俺、気持ち悪いよなー・・・あ~完全に患ってる・・・。
原 :(何となく、ため息)
川瀬のスマホが鳴る
川瀬 :ん?電話?(スマホ見る)あ、あーーーー!!
原 :どしたの!?
川瀬 :イナダさんから電話キターーーーーー!!!
原 :ええーーーー!?
川瀬 :あ、あわわ
原 :出ろ!
川瀬、電話に出る
川瀬 :もしもし・・・はいっ・・・はいっ・・・何でしょう!?・・・めっ迷惑でした!?すみません、すみません!
原 :後輩だよね?
川瀬 :そ、そう、よかった・・・学祭!どうするのかと思って、一緒に回る人いるのかなー?って・・・本当に!?じゃ、僕と一緒に回りましょう!・・・学祭、二人で回りたいんです・・・イナダさんとなら、楽しめそうだから・・・ぼくじゃ、ダメですか・・・?ほっ本当ですか!?やったーーー!!嬉しい!!・・・分かりました、10時ですね!・・・あ、あ~~・・・結婚してください!!
原 :!?
川瀬 :・・・切れてた。
原 :(安堵)良かったじゃん!OKもらえたんだ。
川瀬 :やばい、超嬉しい、もーーー当日何着てこー?ちょっと、服買いに行ってくる!!
川瀬、退場
川瀬 :(袖から)いやっほーーーーい♪
原 :・・・ばーか。
原、台本を読む
原 :言わないで、アポロン、私・・・。
原、そう言うと、笑いだす。一呼吸おき、芝居に戻る。
原 :アポロン、私、あなたには感謝している。でもごめんなさい、私、あなたの事、好きになれない。だって、あなたって人は、いつも適当な恰好して、大声で歌ったりして、自由すぎるから、私振り回される気がするの。
:そんなの御免だわ。そんなあなたを受け入れてくれる・・・そうね、年下の女の子がいいんじゃない?そういう子を選んだ方が良いわよ。私じゃない、私じゃ、なかった・・・。
:何よ、これくらい、言わなくても気づくはずよ。ずっと傍にいたくせに・・・本当に、バカよ、バカ!・・・バカ・・・だけど、優しいところも・・・あって。
:・・・もういいわ、あんたなんか、大っ嫌い!
原、荷物をまとめて部室を出ようとする。
原 :さよなら・・・。
原、退場。
暗転。